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事実婚の夫・妻には相続権がない!財産を渡すための方法と対策を弁護士が徹底解説

 

近年、結婚に対する価値観が多様化しており、婚姻届を出さないまま夫婦同然の関係を築く「事実婚」を選ぶカップルが増えています。しかし、事実婚では法的に相手を相続人とすることができないため、財産を渡したい場合には適切な対策が必要です。

民法によれば、法定相続人とは亡くなった人の配偶者および一定の血縁者のみと定められており、特別な準備をしない限り、事実婚のパートナーは財産を相続することができません。

そこで、今回は事実婚の夫や妻が財産を相続するための方法や、その際の以下の注意点について詳しく解説します。

事実婚の夫・妻には相続権がない理由

相続権は法律上の配偶者と一定の血縁者にのみ認められています。法定相続人と呼ばれるこれらの人々の中に、事実婚の夫や妻は含まれていないため、財産を相続するためには法律上の夫婦関係である必要があります。

民法は法定相続人の順位も規定しています。配偶者は常に相続人となり、それ以外の相続順位は以下のとおりです。

事実婚の夫や妻はこのいずれにも該当しないため、財産を相続させたい場合には事前の対策が必要となります。

事実婚の夫・妻が財産を相続するための方法と対策

事実婚の夫や妻には相続権がありませんが、適切な対策を講じることで財産の承継が可能です。生前の対策が不十分な場合には、「特別縁故者」としての申立ても検討しましょう。

1. 遺言書の作成

遺言書を作成することで、法定相続人以外の人も受遺者(遺言で財産を受け取る人)に指定できるため、事実婚の妻や夫に財産を残すことが可能です。遺言書の法的効力を確保するためには、専門家に依頼して作成してもらうか、公正証書遺言にするのが良いでしょう。

ただし、自分で作成した遺言書には無効になるリスクが高く、法定相続人の遺留分を侵害する恐れがあるため、注意が必要です。

2. 生前贈与

生前贈与は、受け取る相手が限定されていないため、事実婚の妻や夫に財産を前もって贈与することで、遺産の前渡しができます。年間110万円までの贈与には贈与税がかからず、贈与税の申告も不要です。

しかし、贈与者がその財産を手元に残したまま亡くなった場合、その財産は相続財産となり、事実婚の妻や夫は相続できなくなります。年間110万円以内の贈与で財産を渡し切れない場合には、遺言書の作成も併せて検討しましょう。

3. 死亡保険金の受取人に指定

事実婚の夫や妻に財産を残す手段として、死亡保険金の受取人に指定する方法があります。通常、死亡保険金の受取人は配偶者または2親等以内の血族ですが、保険会社によっては事実婚の夫や妻を指定できる場合があります。ただし、以下の条件を満たす必要があります。

生計を共にしている期間や同居期間の条件は保険会社によって異なります。これらの事実は住民票などで証明することが必要です。事実婚の夫や妻を死亡保険金の受取人にする際は、保険金の支払い要件を十分に確認しておきましょう。

4.特別縁故者として申し立てる方法

事実婚の夫や妻が亡くなった際、以下の条件を満たすことで「特別縁故者」として相続財産を取得できる可能性があります。

ただし、特別縁故者の申立ては家庭裁判所に対して行う必要があり、必ずしも認められるわけではありません。特に、業務として療養や看護を行う医師やヘルパーの場合、申立てが認められない可能性が高いので注意が必要です。

5.事実婚の夫や妻が遺族年金を受け取る場合

事実婚の夫や妻であっても、遺族年金を受け取ることが可能です。被相続人と事実婚関係にあり、生計を共にしていたことを証明できれば、受給の条件を満たす可能性があります。

遺族年金の申請をするには、死亡診断書の写しや被相続人の戸籍謄本などを年金事務所に提出しなければなりません。ただし、事実婚の夫や妻である請求者には、戸籍謄本の交付が拒否される役場もあるため、その点には注意が必要です。

事実婚の夫や妻が財産を相続する際の注意点

遺言書の作成や生前贈与を利用すれば、事実婚の夫や妻にも財産を渡すことは可能ですが、相続税がかかる場合には注意が必要です。法定相続人以外には相続税の特例措置が適用されないため、税負担が重くなる可能性があります。また、被相続人が借金を抱えている場合、それも相続財産の一部となるため、以下の点にも注意が必要です。

事実婚の夫や妻は配偶者の税額軽減を利用できない

法定配偶者が遺産を相続する際、1億6,000万円または法定相続分のいずれか大きい方の額までは相続税が免除される「配偶者の税額軽減」が適用されます。しかし、事実婚の夫や妻にはこの制度が適用されないため、相続財産が基礎控除額を超える場合、相続税を納める必要があります。

相続税の基礎控除の計算式:

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

法定相続人以外の人には相続税の軽減措置がないため、相続税の負担を軽減するには、生前に贈与などを行って財産を減らすといった早期の対策が必要となります。

事実婚の夫や妻は小規模宅地等の特例を利用できない

小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅などを相続した際に、敷地の相続税評価額を最大80%まで減額できる制度です。例えば、1億円の土地であれば、評価額が2,000万円まで下がり、主な相続財産が不動産だけの場合には、相続税が非課税になる可能性もあります。

しかし、この特例の適用対象は、被相続人の配偶者や同居している親族、あるいは特定の要件を満たす別居親族に限られています。事実婚の夫や妻が自宅を相続する場合、地価が高い地域では相続税の負担が大きくなることも考慮する必要があります。

事実婚の夫や妻は相続税の障害者控除を受けられない

相続人が障害者である場合、相続税の障害者控除が適用され、一定額が相続税から控除されます。具体的な控除額は次の通りです:

この控除は相続財産ではなく相続税そのものから差し引かれるため、高額な財産を相続しても非課税になる場合があります。しかし、この障害者控除は法定相続人にのみ適用されるため、事実婚の夫や妻が障害者であっても相続税の減額はできません。

事実婚の夫や妻には相続税の2割加算が適用される

事実婚の夫や妻が財産を相続する場合、相続税には2割の加算が適用されるため注意が必要です。法定相続人以外の相続には「偶然性が高い」と考えられているため、税額を通常の1.2倍にして、一般的な相続税と区別する仕組みになっています。

法定相続人の遺留分を侵害する可能性がある

遺言書で事実婚の夫や妻に財産を渡す場合、法定相続人の遺留分に配慮する必要があります。遺留分は法定相続人に保障された最低限の取り分であり、これが法定相続分の1/2または1/3を下回る場合、遺留分の侵害が発生します。

もし、遺留分が侵害された場合、相手側から返還請求を受けることがあり、その際には原則として現金で返還する義務があります。不動産を遺贈する際に遺留分の侵害が生じる場合、返還金を準備するために土地や建物を売却しなければならない場合も考えられます。

高額な借金がある場合には遺贈の放棄を検討する

相続財産には借金も含まれるため、事実婚の夫や妻に全財産を遺贈する場合、住宅ローンなどの返済義務も一緒に引き継ぐことになります。全財産の遺贈や、特定の割合を指定した遺贈を「包括遺贈」といいますが、もし相続財産に高額な借金が含まれている場合は、包括遺贈の放棄を選択肢とすることが重要です。

包括遺贈を放棄するには、家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。その期限は、事実婚の夫や妻の死亡を知った日から3カ月以内です。放棄の申し立てを行う際には、被相続人の住民票除票や戸籍の附票などを提出する必要があり、すべてを期限内に準備する必要があります。高額な借金がある場合は、早期に債務整理を進めることが望ましいでしょう。

まとめ

事実婚の夫や妻には法定相続権がないため、財産を確実に渡したい場合は、遺言書の作成や生前贈与を活用することをお勧めします。遺言書は法的効力があり、生前贈与には受贈者に制限がないため、事実婚のパートナーへ確実に財産を渡すことができます。

ただし、自己作成の遺言書は無効になるリスクが高く、法定相続人の遺留分を侵害する可能性があるため、注意が必要です。また、法定相続人や一部の親族以外には、贈与税や相続税の特例措置が適用されないため、税負担についても事前に考慮しておく必要があります。事実婚の夫や妻に財産を渡すための最適な方法については、相続専門の税理士に相談することをお勧めします。

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