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遺産相続で起こりがちな10のトラブル|生前にできる解決策も徹底解説

「自分が亡くなったら、うちの家族は遺産相続を巡ってトラブルになるのだろうか…?」この記事をご覧になった方の多くは、このような不安を抱え、遺産相続のトラブルについて調べられたのではないでしょうか。本記事では、遺産相続でトラブルになりやすい代表的な10のケースを詳しく解説しています。また、それぞれのケースに対して、生前にできるトラブル解消の方法もご紹介しております。ご自身のご家族に似たケースがあれば、早めに生前対策を行うことが、遺産相続のトラブルを防ぐための近道です。

1. 遺産相続におけるトラブルは「相続人同士が争うこと」で起こる

遺産相続におけるトラブルの多くは、「相続人同士が争うこと」で発生します。令和3年のデータによれば、家庭裁判所に持ち込まれた相続案件のうち、認容・調停成立に至ったものだけでも6,996件が報告されています。つまり、令和3年には6,996件以上の家族が、遺産相続でトラブルを起こしていたということになります。では、なぜ相続人同士が争うのでしょうか。主な理由は、以下の2つに分類されます。

  ・資産に関する問題

  ・家族に関する問題

2. 資産に関する問題により、遺産相続トラブルになりやすい3つのケース

資産に関する問題は、遺産相続においてトラブルが発生しやすい要因の一つです。ここでは、特にトラブルになりやすい3つのケースを紹介します。

【ケース1】主な遺産が自宅の土地・建物のみであるケース

主な遺産が自宅の土地や建物のみである場合、分割が難しいためトラブルが生じやすくなります。特に、自宅を相続する相続人と他の相続人との間で取得額に大きな差が出るため、不公平感が生まれ、相続人同士の争いに発展することがあります。

【ケース2】被相続人が会社を経営していたケース

被相続人が会社を経営していた場合、会社の経営権や株式の分配が争点になることが多いです。相続人の間で経営の引き継ぎが決まらない場合、事業の継続が困難になるだけでなく、経営を巡る相続争いが激化することもあります。

【ケース3】生命保険金の受取人が偏っているケース

生命保険金は遺産分割の対象外ですが、特定の相続人に偏って支払われると、他の相続人との間で不公平感が生じ、トラブルに発展しやすくなります。受取人が一部の相続人に集中している場合は、あらかじめ対策を講じることが大切です。これらのケースにご家族が当てはまる場合、生前に対策を行うことで遺産相続トラブルを未然に防ぐことができます。それが、家族の平和を守る近道となるでしょう。以下の家族を例に見ていきましょう。法定相続人は長男と長女の2人であり、法定相続分はそれぞれ1/2ずつです。また、被相続人である父親の遺産の大半は自宅の土地と建物であり、その自宅には長男夫婦が同居していました。この状況で、長男は同居していた自宅を相続したいと考えています。しかし、長女は自分にも1/2の法定相続分があるため、長男だけが遺産の大部分である自宅を相続することに納得がいかず、不公平に感じています。このようなケースでは、分割が難しい不動産の扱いが原因で、相続人同士の意見が対立しやすく、相続トラブルに発展する可能性が高くなります。たとえ法定相続分に基づいて遺産を分割しようとしても、不動産の評価額やそれ以外の財産が少ない場合、分割方法に不満が生じることがよくあります。このように、主な遺産が自宅の土地や建物のみである場合、相続人同士で遺産の取得額に大きな差が生じやすくなり、不公平感が生まれます。特に不動産は分割が難しいため、相続人の意見が対立しやすく、遺産相続トラブルに発展する可能性が高まります。

生前にできるトラブル解消法の一例

生前にトラブルを防ぐ方法として、「代償分割」について長男・長女と話し合い、長男が資金を用意しておくことが挙げられます。たとえば、長男が自宅を相続し、長女にも同等の遺産を相続させたい場合、代償分割という方法が効果的です。これは、長男が不動産を相続する代わりに、長女に代償金として現金を支払うことで、不公平感を解消する方法です。ただし、この方法を取るには、長男に資金力が必要です。被相続人である父が生前に、「自分が亡くなった後、遺産相続トラブルが起こりやすい状況である」と理解し、長男・長女と代償分割について話し合い、長男が計画的に資金を準備しておくことが重要です。また、遺産を平等にするために「自宅の土地や建物を兄弟で共有する」ことを検討する方もいますが、これはあまりおすすめできません。共有不動産では、全員の同意がなければ売却や賃貸、リフォームができませんし、さらに兄弟の一方が亡くなった場合、権利関係が複雑になり、後々のトラブルの原因となる可能性が高いからです。生前にしっかりと話し合い、適切な対策を講じることで、将来の相続トラブルを回避することができます。

【ケース2】被相続人が会社を経営していたケース

被相続人が会社を経営していた場合、後継者が会社の事務所や自社株式を相続することが一般的です。会社の経営状況にもよりますが、会社関連の財産は高額になりがちです。後継者が相続人で、他にも相続人がいる場合、後継者が相続する遺産が他の相続人よりも多くなり、トラブルに発展する可能性があります。

家族を例に見てみましょう

法定相続人は長男と長女の2人で、法定相続分はそれぞれ1/2です。父親が経営者であった場合、後継者である長男が会社の事務所や自社株式を相続することになりました。会社は安定しており、会社関連の財産は非常に高額です。結果として、長男が相続する財産が、長女が相続する財産よりも大幅に多くなってしまいました。長女は、自分にも1/2の法定相続分があるため、長男が後継者だからといって多くの遺産を相続することに納得がいきません。この状況を避けるために、会社の株式を1/2ずつ分けるという方法もありますが、長男は、株式が分散することで会社の意思決定に必要な議決権を失い、経営に支障をきたす可能性があることを懸念し、会社関連の遺産は自分がすべて相続したいと強く希望しています。このように、被相続人が会社を経営していた場合、会社関連の高額な遺産を特定の相続人が相続することで、他の相続人との間で遺産の不公平感が生じ、トラブルに発展する可能性があります。

生前にできるトラブル解消法の一例

このようなトラブルを防ぐための生前対策として、父親が生前に、遺留分を含めた遺産分割を計画し、遺言書を作成することが有効です。たとえば、会社経営に関わらない現金や有価証券を長女に相続させるなどして、不公平感がないように配慮した遺産分割を行うことが重要です。また、法的拘束力はありませんが、遺言書の付言事項として、父親の会社経営に対する思いや長男への後継者としての期待を記載することも、家族間の理解を深めるための有効な手段となるでしょう。これにより、長女にも父親の意図を伝え、不公平感を和らげることができます。

【ケース3】生命保険金の受取人が偏っているケース

生命保険金の受取人が偏っている場合、相続人間で不公平感が生じ、遺産相続トラブルに発展する可能性があります。生命保険金は、被相続人の財産ではなく、受取人の固有財産です。そのため、生命保険金は遺産分割の対象ではなく、相続財産に含まれません。ただし、相続税の計算上はみなし相続財産として扱われ、非課税限度額を超えた部分には相続税が課されます。

家族を例に見てみましょう

法定相続人は長男と長女の2人で、法定相続分はそれぞれ1/2ずつです。父親は、長男を受取人として1,000万円の死亡保険に加入しており、父が亡くなった際に長男はその1,000万円の生命保険金を受領しました。一方で、長女を受取人とした保険はありませんでした。この場合、遺産分割において法定相続分どおりに財産を分けたとしても、トータルでは長男が1,000万円多く父の財産を受け取ることになります。この差に長女が納得できない場合、相続トラブルに発展する可能性が高いです。

生前にできるトラブル解消法の一例

このようなトラブルを防ぐためには、生命保険金の受取人を見直すことが有効です。たとえば、生命保険金の受取人を長男500万円、長女500万円と均等に分けることで、不公平感を解消できます。生命保険金の受取人は「受取人といえば配偶者」や「家を継ぐ長男」といった理由で深く考えずに指定されることが多いです。また、結婚前に親を受取人にして、そのまま変更されていないケースも少なくありません。これを機に、生命保険契約の内容を確認し、受取人を見直すことをおすすめします。生前に適切な配慮をすることで、遺産相続の不公平感を防ぎ、相続トラブルを回避できる可能性が高まります。

3. 家族に関する問題により、遺産相続トラブルになる7つのケース

家族に関する問題は、遺産相続においてトラブルが生じやすい原因の一つです。ここでは、特にトラブルになりやすい7つのケースを紹介します。

【ケース1】特定の相続人が遺産を独占したがるケース

特定の相続人が遺産を独占しようとする場合、遺産相続トラブルが発生しやすくなります。かつての**旧民法(昭和22年まで施行)では、家督相続という制度があり、長男がすべての遺産を相続するのが一般的でした。しかし、現在の相続制度では、長男が特別扱いされることはなく、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)**によって自由に遺産分割の内容を決定することができます。それにもかかわらず、現代でも長男がすべての遺産を相続するべきだと信じるケースが少なくありません。他の相続人の権利を認めず、遺産を独占しようとする行為がトラブルの原因となります。

家族を例に見てみましょう

法定相続人は長男・長女・次女の3人で、法定相続分はそれぞれ1/3ずつです。しかし、長男は旧民法の家督相続の考えを持っており、「長男である自分がすべての遺産を相続して当然」と思っています。一方、長女と次女は現在の相続制度に基づき、自分たちにも相続権があると主張します。このように、特定の相続人が遺産を独占しようとすると、他の相続人が納得せず、遺産相続トラブルに発展することがあります。

生前にできるトラブル解消法の一例

もし父親も「長男にすべての遺産を相続させたい」と考えていた場合、生前にできるトラブル解消法として、遺言書を作成することが有効です。父親が生前に**「長男にすべての遺産を相続させる」という遺言書**を作成し、長男にすべての遺産を相続させる意思を明確に伝えることで、ある程度の対策ができます。

ただし、現在の相続制度では、長男だけが遺産を相続することは、他の相続人が納得しない限り不可能です。相続には遺留分という最低限の権利が保障されており、他の相続人の遺留分を侵害しない形で話し合うことが求められます。長男が特別扱いされない現行の相続制度の趣旨を理解し、生前に話し合いの場を設けて、長女や次女に父親の意思を伝え、納得を得る努力が大切です。

【ケース2】特定の相続人だけが生前贈与を受けていたケース

特定の相続人だけが生前贈与を受けていた場合、その贈与を無視して遺産を法定相続分で按分すると、不公平感が生じ、トラブルが発生しやすくなります。

家族を例に見てみましょう法定相続人は長男と長女の2人で、法定相続分はそれぞれ1/2です。

しかし、長男は被相続人(父)から住宅購入資金として1,000万円の生前贈与を受けていました。一方、長女は父から生前贈与を受けていません。この状態で相続が発生し、法定相続分通りに遺産を分けた場合、トータルで長男が1,000万円多く父の財産を受け取ることになります。この差に長女が納得しない場合、遺産相続トラブルに発展する可能性が高まります。このように、特定の相続人だけが生前贈与を受けていた場合、不公平感が生じ、相続人間でのトラブルが起こりやすくなります。

生前にできるトラブル解消法の一例

生前の話し合いがトラブル防止のカギです。長男への生前贈与について家族内でよく話し合っておき、相続発生時にその生前贈与が「特別受益」となり、持ち戻し計算を行うことで公平な遺産分割になることを全員が理解していれば、トラブルは避けられるでしょう。また、もし長男への贈与に特別な理由がある場合、その理由を明確に伝えることが重要です。この場合、持ち戻しを行わないよう「特別受益の持ち戻し免除」を遺言書で意思表示しておくことも、トラブル回避の方法の一つです。ただし、この場合も遺留分には注意を払う必要があります。さらに、婚姻期間20年以上の夫婦の一方が、配偶者に居住用不動産を贈与した場合、平成30年の民法改正により「特別受益の持ち戻し免除」の意思が推定されることになっています。なお、すべての生前贈与が特別受益に該当するわけではありません。詳細については、下記リンクを参照してください。

■特別受益の詳細はこちら:
「特別受益」「寄与分」に相続開始後10年までの期限が設けられました

【ケース3】被相続人に前妻との間の子供がいるケース

被相続人に前妻との間に子供がいる場合、その子供にも平等な相続権が認められます。前妻との子供であっても、死亡時の家族と同等の相続権があるため、この状況は遺産相続トラブルに発展しやすいです。腹違いの子供同士は、互いに連絡を取り合っていないケースが多く、相続に関して意思疎通を図るのに手間がかかります。また、それぞれの立場や考え方が異なるため、意見の対立が生じやすく、遺産相続トラブルに発展する可能性が高まります。

家族を例に見てみましょう

法定相続人は長男と長女の2人で、法定相続分はそれぞれ1/2です。被相続人(父)には離婚と再婚歴があり、長男は元配偶者との間の子供、長女は再婚後の配偶者との間の子供です。
しかし、父親は離婚後、長男とは疎遠で、長男と長女はお互いに会ったこともなければ、連絡先も知らない状況です。この状態で相続が発生すると、長女は長男の連絡先を知るために戸籍の附票を請求したり、弁護士に捜索を依頼する必要があり、相続手続きがスムーズに進まない可能性があります。さらに、お互いの立場や考え方が違うため、遺産相続トラブルに発展するリスクが非常に高いです。

生前にできるトラブル解消法の一例

このようなトラブルを防ぐためには、遺言書を作成し、各相続人に相続させる財産を明確に指定しておくことが有効です。長男と長女が面識がない状態で、父の死後に遺産について話し合うのは大きな負担となるため、父親が生前に遺言書を作成し、長男にはこの財産、長女にはこの財産と、あらかじめ具体的に分けておくことが重要です。これにより、相続トラブルを未然に防ぐことができます。生前の計画的な対応が、後の相続手続きにおける家族間のトラブルを防ぎ、スムーズな相続を実現する鍵となります。

【ケース4】特定の相続人などが被相続人の介護をしていたケース

特定の相続人が被相続人の介護をしていた場合、その負担が偏っていることから、遺産相続トラブルに発展しやすくなります。生前に献身的に介護を行っていた相続人には「寄与分」が認められることがあります。寄与分が認められると、その相続人は本来の法定相続分よりも多くの遺産を受け取ることができます。ただし、寄与分が認められるのは、被相続人の財産の維持・増加に対して「特別の寄与」があった場合に限られる点に注意が必要です。また、他の相続人が寄与分を認めないケースや、寄与分の具体的な金額について意見が対立することが多く、結果としてトラブルに発展しやすいです。

家族を例に見てみましょう

法定相続人は長男と長女の2人で、法定相続分はそれぞれ1/2ずつです。
ただし、長男の妻は法定相続人ではありません。

長男とその妻は長年にわたって被相続人(父)を献身的に介護してきました。一方で、長女は遠方に住んでおり、介護には関わっていません。

この状況で相続が発生し、長男夫婦は寄与分を請求します。しかし、長女は寄与分を認めず、法定相続分の1/2を主張しました。このように、特定の相続人が介護を行っていた場合、寄与分を巡る意見の違いから遺産相続トラブルが起こることが多いです。

特別寄与料制度の導入

さらに、平成30年の民法改正により、特別寄与料の制度が創設されました。この制度により、たとえば長男ではなく相続人ではない長男の妻が介護をしていた場合でも、一定の要件を満たせば特別寄与料を請求できるようになりました。

生前にできるトラブル解消法の一例

このようなトラブルを防ぐためには、被相続人である父が遺言書を作成し、長男夫婦に配慮した遺産分割を明示することが有効です。遺言書に具体的な遺産分割の内容を記載し、長男とその妻の介護への貢献を評価した分配方法を示すことで、遺産相続の際のトラブルを未然に防ぐことができます。

【ケース5】相続人の中に認知症の人がいるケース

相続人の中に認知症など判断能力が低下している人がいる場合、遺産分割がスムーズに進まず、遺産相続トラブルに発展する可能性があります。

家族を例に見てみましょう

法定相続人は母、長男、長女の3人で、法定相続分は母が1/2、長男と長女がそれぞれ1/4ずつです。
しかし、母は認知症を患っており、判断能力が低下しています。相続が発生すると、被相続人(父)の財産は凍結され、銀行の預金は引き出せず、不動産の処分もできなくなります。財産の凍結を解除するには、相続人全員(母・長男・長女)で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。しかし、この家族では母が認知症のため、遺産分割協議に参加して意思表示をすることができません。その結果、遺産分割が行えず、財産の凍結が解除されずに、預金の引き出しや不動産の処分ができない状態が続いてしまいます。

生前にできるトラブル解消法の一例

このようなケースを防ぐためには、被相続人である父が生前に遺言書を作成しておくことが有効です。これにより、遺産分割協議を行わずに遺産分割が可能となり、相続手続きがスムーズに進みます。また、認知症の相続人の代わりに代理人が財産を管理する「成年後見制度」の活用も検討すべきです。この制度を利用することで、家庭裁判所の申し立てにより親族や専門家が後見人として選任され、認知症の相続人に代わって財産管理を行うことができます。ただし、「成年後見制度」には報酬が発生することや、手続きの負担がある点などのデメリットも存在します。高齢化社会の進展に伴い、このような事例は今後ますます増加すると考えられます。したがって、遺言書の作成はトラブル回避のために非常に有効な手段です。

【ケース6】不公平な遺言書が出てきたケース

遺言書の内容が不公平な場合、たとえ形式的に有効な遺言書であっても、相続人同士で納得がいかず、遺産相続トラブルに発展する可能性が高くなります。

家族を例に見てみましょう

法定相続人は長男、長女、次女の3人で、法定相続分はそれぞれ1/3ずつです。被相続人(父)が生前に作成した遺言書には、「長男にすべての財産を相続させる」と記載されていました。長男は、遺言書に従い、自分がすべての財産を相続できると主張します。一方で、長女と次女は遺言書の内容に納得せず、家庭裁判所に遺留分侵害額請求を行いました。遺留分侵害額請求が認められた場合、長男は遺言書通りに全財産を相続することはできず、長女と次女にも最低限の相続分が確保されることになります。

生前にできるトラブル解消法の一例

生前に遺産相続トラブルを防ぐためには、遺留分の存在をよく理解し、遺留分を考慮した遺言書を作成することが重要です。現在の相続制度では、法定相続人(兄弟姉妹を除く)には、最低限の遺産取得分として遺留分が保証されています。そのため、たとえ遺言書に「全財産を長男に相続させる」と記載したとしても、長女や次女が遺留分侵害額請求を行えば、長男がすべての財産を相続することはできません。このようなトラブルを防ぐために、遺留分を考慮した遺言書を作成し、他の相続人にも最低限の相続分を確保することで、遺産相続における争いを避けることができます。

遺留分を考慮した遺言書の作成

  • 遺留分とは?
    遺留分は、法定相続人に対して法律で最低限保証されている遺産の割合です。遺言書で特定の相続人に全財産を譲る旨を記載しても、他の相続人が遺留分請求をすれば、その相続人も相続分を得ることができます。
  • 遺留分の割合
    配偶者や子供の場合、法定相続分の1/2が遺留分として認められます。したがって、遺言書作成の際にはこの遺留分を考慮し、相続人全員が納得できるような内容を心がけることが大切です。

遺留分を無視した遺言書は後々トラブルの原因となるため、遺産相続を円滑に進めるためにも、生前に適切な遺言書の作成を検討しましょう。

【ケース7】特定の相続人が被相続人の財産管理をしていたケース

被相続人と同居しており、生前に財産管理をしていた相続人がいる場合、財産の使い込みを疑われることが多く、遺産相続トラブルに発展する可能性があります。

家族を例に見てみましょう

法定相続人は長男と長女の2人で、法定相続分はそれぞれ1/2ずつです。被相続人(父)と同居していた長男が、父の預金通帳や資産を管理していました。しかし、父の死後、長女が父の預金通帳を確認したところ、長男の口座に定期的な振込や不審な出金記録があることに気づきます。これにより、長女は「長男が父の預金を使い込んでいた」と疑い、長男に対して預金の返還を要求しました。一方、長男は使い込みを否定し、話し合いで解決せずに裁判に発展する可能性があります。このような財産管理を巡る不信感が遺産相続トラブルの火種となることは少なくありません。

生前にできるトラブル解消法の一例

このようなトラブルを未然に防ぐためには、任意後見制度の利用を検討することが有効です。

任意後見制度を利用することで、被相続人(父)が自分で財産管理をできなくなった際に、第三者である任意後見人が財産を管理します。任意後見人が管理すれば、長男が預金を使い込む疑いや、長女が長男を疑う心配を避けることができます。もし、任意後見制度を利用していない場合でも、財産を管理している相続人(この場合は長男)は、出費や振込の記録をしっかり残しておくことが重要です。これにより、後で疑念が生じた場合にも透明性を確保でき、トラブルの防止につながります。

任意後見制度について

任意後見制度は、被相続人が元気なうちに、将来の財産管理や生活支援を誰に任せるかを決めておく制度です。この制度を利用することで、後々のトラブルを防ぎ、相続がスムーズに進むように備えることができます。

4. 遺産相続トラブルは弁護士に相談することをおすすめします

遺産相続トラブルが発生した場合や、トラブルを未然に防ぎたいと考えている方は、弁護士に相談することを強くおすすめします。弁護士は法律や紛争解決の専門家であり、遺産相続における法的な問題や対立を適切に解決するためのアドバイスやサポートを提供できます。

税理士や司法書士は相続税の申告や遺産分割の手続きに関する専門家ですが、紛争解決のプロフェッショナルではありません。したがって、トラブルが発生した場合は、弁護士一択で相談するのが最も適切です。

5. まとめ

ご自身のご家族に似たケースはありましたでしょうか?もし似たケースがあった場合は、早めに生前対策を行い、遺産相続トラブルを未然に防ぐことが重要です。また、トラブルが発生した際や事前のアドバイスが必要な際は、弁護士に相談することで、適切な対応が可能になります。

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