【ケース6】不公平な遺言書が出てきたケース
遺言書の内容が不公平な場合、たとえ形式的に有効な遺言書であっても、相続人同士で納得がいかず、遺産相続トラブルに発展する可能性が高くなります。
家族を例に見てみましょう
法定相続人は長男、長女、次女の3人で、法定相続分はそれぞれ1/3ずつです。被相続人(父)が生前に作成した遺言書には、「長男にすべての財産を相続させる」と記載されていました。長男は、遺言書に従い、自分がすべての財産を相続できると主張します。一方で、長女と次女は遺言書の内容に納得せず、家庭裁判所に遺留分侵害額請求を行いました。遺留分侵害額請求が認められた場合、長男は遺言書通りに全財産を相続することはできず、長女と次女にも最低限の相続分が確保されることになります。
生前にできるトラブル解消法の一例
生前に遺産相続トラブルを防ぐためには、遺留分の存在をよく理解し、遺留分を考慮した遺言書を作成することが重要です。現在の相続制度では、法定相続人(兄弟姉妹を除く)には、最低限の遺産取得分として遺留分が保証されています。そのため、たとえ遺言書に「全財産を長男に相続させる」と記載したとしても、長女や次女が遺留分侵害額請求を行えば、長男がすべての財産を相続することはできません。このようなトラブルを防ぐために、遺留分を考慮した遺言書を作成し、他の相続人にも最低限の相続分を確保することで、遺産相続における争いを避けることができます。
遺留分を考慮した遺言書の作成
- 遺留分とは?
遺留分は、法定相続人に対して法律で最低限保証されている遺産の割合です。遺言書で特定の相続人に全財産を譲る旨を記載しても、他の相続人が遺留分請求をすれば、その相続人も相続分を得ることができます。 - 遺留分の割合
配偶者や子供の場合、法定相続分の1/2が遺留分として認められます。したがって、遺言書作成の際にはこの遺留分を考慮し、相続人全員が納得できるような内容を心がけることが大切です。
遺留分を無視した遺言書は後々トラブルの原因となるため、遺産相続を円滑に進めるためにも、生前に適切な遺言書の作成を検討しましょう。
【ケース7】特定の相続人が被相続人の財産管理をしていたケース
被相続人と同居しており、生前に財産管理をしていた相続人がいる場合、財産の使い込みを疑われることが多く、遺産相続トラブルに発展する可能性があります。
家族を例に見てみましょう
法定相続人は長男と長女の2人で、法定相続分はそれぞれ1/2ずつです。被相続人(父)と同居していた長男が、父の預金通帳や資産を管理していました。しかし、父の死後、長女が父の預金通帳を確認したところ、長男の口座に定期的な振込や不審な出金記録があることに気づきます。これにより、長女は「長男が父の預金を使い込んでいた」と疑い、長男に対して預金の返還を要求しました。一方、長男は使い込みを否定し、話し合いで解決せずに裁判に発展する可能性があります。このような財産管理を巡る不信感が遺産相続トラブルの火種となることは少なくありません。
生前にできるトラブル解消法の一例
このようなトラブルを未然に防ぐためには、任意後見制度の利用を検討することが有効です。
任意後見制度を利用することで、被相続人(父)が自分で財産管理をできなくなった際に、第三者である任意後見人が財産を管理します。任意後見人が管理すれば、長男が預金を使い込む疑いや、長女が長男を疑う心配を避けることができます。もし、任意後見制度を利用していない場合でも、財産を管理している相続人(この場合は長男)は、出費や振込の記録をしっかり残しておくことが重要です。これにより、後で疑念が生じた場合にも透明性を確保でき、トラブルの防止につながります。
任意後見制度について
任意後見制度は、被相続人が元気なうちに、将来の財産管理や生活支援を誰に任せるかを決めておく制度です。この制度を利用することで、後々のトラブルを防ぎ、相続がスムーズに進むように備えることができます。
4. 遺産相続トラブルは弁護士に相談することをおすすめします
遺産相続トラブルが発生した場合や、トラブルを未然に防ぎたいと考えている方は、弁護士に相談することを強くおすすめします。弁護士は法律や紛争解決の専門家であり、遺産相続における法的な問題や対立を適切に解決するためのアドバイスやサポートを提供できます。
税理士や司法書士は相続税の申告や遺産分割の手続きに関する専門家ですが、紛争解決のプロフェッショナルではありません。したがって、トラブルが発生した場合は、弁護士一択で相談するのが最も適切です。
5. まとめ
ご自身のご家族に似たケースはありましたでしょうか?もし似たケースがあった場合は、早めに生前対策を行い、遺産相続トラブルを未然に防ぐことが重要です。また、トラブルが発生した際や事前のアドバイスが必要な際は、弁護士に相談することで、適切な対応が可能になります。