相続放棄ができないケースとは?弁護士が解説
相続放棄ができない場合には、①法定単純承認が成立した場合、②熟慮期間が過ぎた場合、③必要な書類が不足している場合があります。
故人の遺産に借金などがあるため相続放棄を検討されている方は、放棄が認められるか不安かと思います。ここでは、相続放棄が認められなかった具体的なケースを取り上げ、失敗を防ぐポイントや対策方法についてわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
相続放棄とは
相続放棄は、被相続人(亡くなった方)の財産を一切引き継がない手続きです。相続放棄を行うことで、相続人は故人の負債も含む財産の責任を負うことがなくなります。相続放棄を希望する場合は、家庭裁判所への申し立てが必要です。
相続放棄が認められる確率
家庭裁判所は、明確な却下理由がなければ、相続放棄の申し立てを広く受理する姿勢です(東京高裁平成22年8月10日判例)。ただし、相続放棄が家庭裁判所で受理されても、有効性が確定するわけではありません。異議が出た場合には、地方裁判所で再度判断が行われます。
相続放棄ができないケース
1. 法定単純承認が成立した場合(民法921条)
以下のような行為が「単純承認」に該当し、相続放棄が認められない可能性があります:
- 遺産から現金を引き出した
- 預貯金の解約や払い戻しを行った
- 高価な遺品を自宅に持ち帰った
- 不動産の名義変更や賃貸物件の解約を行った
- 借金の返済や不動産の修繕を行った
これらの行為は相続人が財産を処分したとみなされ、相続放棄が否認される可能性があります。こうした状況が発生する前に、専門の弁護士に相談することが重要です。
2. 熟慮期間が経過している場合
相続が開始してから3か月が経過すると、相続放棄が認められません。ただし、故人の財産や負債がすぐに判明しにくい場合、例外的に熟慮期間の起算点が延長されることがあります。
3. 必要な書類が不足している場合
申立には、申立人が相続人であることを証明する戸籍書類が必要です。不備があると家庭裁判所で受理されないため、事前に戸籍をしっかり確認しましょう。
これらの点に留意し、相続放棄手続きをスムーズに進めるために、ぜひ専門の弁護士へご相談ください。