海外在住の相続人が不動産を相続する際に必要な在留証明書
在留証明書は、相続人が海外でどこに居住しているか(生活の本拠地)を証明するための書類です。不動産登記のほか、年金受給や学校の受験手続きにも利用されます。
在留証明書の取得方法
申請先
在留証明書が必要な方は、居住国の日本大使館や領事館に出向きます。
※本人が大使館や領事館に出向けないやむを得ない事情がある場合、委任状を用意することで代理申請が可能な場合もあります。詳細は、該当の在外公館に事前にご相談ください。
※在留証明書は申請者本人の意思確認と提出先の確認、さらに生存確認も兼ねるため、原則として本人による申請が求められます。
証明書発行
申請後、在留証明書が発行されます。
在留証明書の発行は、重要な手続きの一環として事前にしっかりと準備しておくことをおすすめします。
在留証明書の取得に必要な書類
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日本国籍および本人確認書類
(例:有効な日本国旅券)
- 住所確認ができる書類
(例:現地官公署が発行する滞在許可証、運転免許証、納税証明書、公共料金の請求書など住所が記載されたもの、または現地警察が発行する居住証明)
- 滞在開始時期(期間)を確認できる書類
(例:賃貸契約書、公共料金の請求書など)
※滞在期間が3か月未満の場合は、今後3か月以上の滞在を確認できるものが必要です。
- 本籍地の詳細記載を希望する場合
証明書の「本籍地」欄に都道府県名のみでなく番地まで記載を希望する場合は、戸籍謄本(抄本)も必要です。
詳細については、証明を受ける在外公館のホームページなどでご確認ください。
海外在住の方が忙しく、一時帰国できない場合は遺産分割協議書を海外へ郵送し「サイン証明書」を取得してもらいます。
日本に一時帰国している場合には、日本の公証役場でサイン証明書を取得することもできます。
本人確認資料として、パスポート、海外の住所がわかるもの(在留証明や免許証等)を持参して、公証人の目の前で遺産分割協議書等に自分で署名することで、それらの書類に本人が自筆で署名したという「サイン証明」を作成することができます。このサイン証明は印鑑証明書と同じ公的な証明書類として扱われます。
ただし、不動産の登記手続きでは「在留証明書」が必要となりますので、覚えておきましょう。
もし、海外在住の方が不動産を相続する場合は、一時帰国する前に「在留証明書」を取得しておくとスムーズでしょう。
3.相続人が海外にいる場合に気をつけること
ここまでご覧いただいたように、相続人が海外にいる場合、通常の相続税申告に比べて準備すべき手続きが増えることがお分かりいただけたかと思います。この章では、海外在住の相続人が関わる相続税申告での注意点を詳しくまとめましたので、一つずつ確認していきましょう。
書類準備・やりとりに時間がかかるサイン証明書や在留証明書は、窓口に行けば即日発行されますが、郵送には以下の通り日数がかかります。
【国際郵便の配達目安】
- EMS:2~4日
- 航空便:3~6日
- 船便:1~3か月
申告期限に間に合うよう、余裕を持って手続きを進めることが大切です。詳しくは、日本郵政グループの「発送方法の比較」ページをご覧ください。
遺産分割が進みにくい
日本国内であれば、相続人同士が直接会って話し合うことが容易ですが、海外に相続人がいる場合はそうはいかないことが多いです。時差の問題や通信環境の不安定さなど、さまざまな障害が考えられます。
お互いを思いやり、時間や環境に配慮しながら、円満な話し合いが進むよう心がけましょう。
現金を相続すると手続きが面倒
海外在住の相続人が日本の預貯金を相続する場合、日本国内に口座がなければ海外送金が必要になります。しかし、日本の金融機関では、マネー・ロンダリングやテロ資金供与防止の観点から、海外送金に対する厳しい制限や確認作業が実施されています。
各金融機関により手続き方法は異なり、遺産分割協議書などの送金原資を確認できる書類や、戸籍謄本の提示を求められることがあります。また、送金金額にも制限がある場合があり、たとえば「1回につき100万円未満」「1日につき200万円以下」「1ヶ月につき500万円以下」などと定められることがあります。
さらに、海外送金手数料は2,000円から7,500円程度と、国内送金よりも高額になるため、費用についても考慮が必要です。
まとめ
慣れない相続手続きに加え、海外に相続人がいる場合は、通常以上に手続きが複雑で労力がかかります。少しでも不安を感じる方は、専門家に相談することをおすすめします。第三者の専門家を交えることで、手続きを円滑に進め、円満な相続を実現しましょう。