婿養子はどちらの財産も相続可能!妻の両親と実両親の相続分を徹底解説
「婿養子」と「婿」の違いとは?相続における重要ポイントを解説
「婿養子」とは、妻の両親と養子縁組を結んだ男性を指します。一方で、「婿」は妻の氏を名乗るものの、妻の両親とは養子縁組を結んでいない男性のことです。
この違いは、相続の権利に大きく影響します。婿養子の場合、法律上は妻の両親と実両親両方の相続人となるため、幅広い相続権を持つことが特徴です。さらに、法定相続分や遺留分の権利についても、実子と同等に扱われます。
しかし、全てのケースでスムーズに遺産が受け取れるとは限りません。本記事では以下の内容について詳しく解説します。
婿養子が相続できる範囲
婿養子が妻の両親の遺産を受け取れない場合
法定相続分と遺留分の考え方
相続放棄を選ぶ際の注意点
これを読めば、婿養子としての相続権についてしっかり理解できるはずです!
第1章 婿養子と婿の違い
婿養子の相続について理解する前に、「婿養子」と「婿」の違いをしっかり確認しておきましょう。この違いが相続権の有無や範囲に大きく影響を与えます。
婿養子とは?
「婿養子」とは、妻の親と養子縁組を結んでいる男性 を指します。この養子縁組により、法律上は妻の親の養子となり、妻の家族の一員として扱われます。養子縁組を結ぶことで、妻の両親の相続権を得られる点が特徴です。
婿とは?
一方で「婿」とは、妻の親と養子縁組をしていない男性 のことを指します。妻との婚姻時に妻の氏を名乗ることを選択する場合もありますが、養子縁組を結んでいないため、法律上は妻の親の相続権はありません。
相続権における大きな違い
婿養子 は、養子縁組を結んでいるため、実両親と妻の両親の両方の相続人になることができます。
婿 は、養子縁組をしていないため、妻の親の相続権はなく、自身の実両親の相続人となります。
このように、妻の親と養子縁組をしているかどうかの違いによって、相続の権利が大きく異なります。次章では、具体的に婿養子が誰の相続人になれるのかを詳しく解説していきます。
第2章 婿養子は妻の両親と実両親の両方の相続人になれる
婿養子になると、妻の両親 と実両親 の両方の相続人となる権利を持つことができます。これは、婿養子が妻の親と普通養子縁組 を行うことで親子関係を法的に結んでいるためです。また、普通養子縁組をしても実両親との親子関係は法的に継続するため、実両親が亡くなった場合もその相続権を失うことはありません。
婿養子の相続権の仕組み
婿養子が妻の両親の養子になることで、妻の両親にとっては実子と同様の法定相続分を持つことが可能です。さらに、実両親に対しても通常の子供として相続権を持つため、両家の財産を相続できる立場にあります。
具体例:婿養子の法定相続分を計算
以下のケースで、婿養子の法定相続分を計算してみます。
相続人 :配偶者、長女A、婿養子B、次女C
相続財産 :預貯金6,000万円
法定相続分の内訳
日本の民法において、配偶者と複数の子供がいる場合の法定相続分は以下のように決まります。
配偶者:全体の1/2
子供(実子および養子):残りの1/2を等分割
このケースの場合、法定相続分と分配額は以下の通りです。
配偶者:6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
長女A:6,000万円 × 1/6 = 1,000万円
婿養子B:6,000万円 × 1/6 = 1,000万円
次女C:6,000万円 × 1/6 = 1,000万円
結果 :婿養子Bは他の実子と同じ1,000万円の法定相続分を得られます。
注意点
ただし、婿養子であっても妻の両親の遺産を相続できない場合があります。具体的には以下のようなケースが考えられます。
遺言で別の相続分が指定されている場合
婿養子が相続放棄を行った場合
婿養子が養子縁組を解消していた場合
これらのケースについては、次の章で詳しく解説していきます。
第3章 婿養子が妻の両親の遺産を相続できないケース
婿養子は原則として妻の両親の遺産を相続する権利がありますが、いくつかの特定の状況ではその権利を失うことがあります。この章では、婿養子が妻の両親の遺産を相続できなくなるケースについて詳しく解説します。
3-1 養子縁組を解消したケース
何らかの理由で、妻の両親との養子縁組が解消された場合、婿養子と妻の両親との法律上の親子関係が消滅します。この場合、婿養子は妻の両親の相続人にはなれません。
養子縁組解消の手続き
養子縁組を解消するには、離縁届 を市区町村役場に提出する必要があります。この手続きには、養親(妻の両親)と養子(婿養子)双方の合意が必要です。離縁届が受理されると、法律上の親子関係が終了します。
注意点
離縁後は、相続権を持たないだけでなく、遺留分の請求権も失います。そのため、養子縁組を解消する場合は、相続にどのような影響が出るかを十分に考慮する必要があります。
3-2 亡くなった人が遺言書を用意していたケース
妻の両親が遺言書を作成している場合、遺産分割は遺言書の内容に従って行われます。この際、遺言書に「婿養子には財産を与えない」と記載されている場合、婿養子はその遺産を相続することができません。
遺言書が優先される理由
日本の民法では、相続は遺言書に記載された内容が優先されると定められています。そのため、遺言書が存在する場合、法定相続分は適用されません。
遺留分について
ただし、婿養子が妻の両親と養子縁組をしている場合、遺留分 を請求する権利があります。遺留分とは、法定相続人が最低限度受け取ることが保証される遺産の割合です。
遺留分を侵害された場合、婿養子は遺産を受け取った人物に対し、侵害額に相当する金銭を請求できます。たとえば、遺言書の内容が以下のような場合を考えます:
相続人 :配偶者、長女A、婿養子B
相続財産 :預貯金3,000万円
遺言書により長女Aが全額を相続
この場合、婿養子Bの遺留分は3,000万円 × 1/4 = 750万円 となります。この金額を長女Aに請求することが可能です。
婿養子としての注意点
養子縁組の解消や遺言書の存在によって、相続権を失うリスクがあるため、事前に十分な話し合いや法律相談を行いましょう。
遺留分の請求には期限があるため、侵害が発覚した際には速やかに手続きを進めることが重要です。
次の章では、婿養子としての相続に関する留意点や手続きについて詳しく解説します。
第4章 婿養子の相続に関するよくある質問
婿養子の相続に関しては、さまざまな疑問や誤解がつきものです。ここでは、特に多く寄せられる質問について詳しく回答していきます。
Q1. 婿養子は妻と離婚したら義両親の相続人から外れる?
A. 離婚しても養子縁組が解消されない限り、義両親の相続人のままです。
妻との離婚は、妻の両親との養子縁組に直接影響を及ぼしません。そのため、離婚後も養子縁組が継続している限り、義両親の相続人としての権利を維持します。ただし、離婚後に養親と養子の双方が合意して養子縁組を解消(離縁)した場合には、義両親の相続権を失います。
Q2. 婿養子は相続放棄できる?
A. はい、相続放棄は可能です。
婿養子であっても、他の相続人と同様に相続放棄をする権利があります。相続放棄を行う場合には、故人の死亡を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
相続放棄の注意点
相続放棄をすると、義両親の財産だけでなく負債も相続しなくなります。
相続放棄をした場合、他の相続人に遺産が分配されるため、影響を考慮する必要があります。
Q3. 婿養子は相続税の2割加算の対象に含まれる?
A. 条件を満たせば2割加算の対象外となります。
相続税の「2割加算」は、故人の孫や養子のうち特定の条件を満たさない場合に適用されますが、以下の条件を満たす場合は対象外となります:
婿養子が亡くなった人の直系卑属(実子や養子)と同じ扱いを受ける場合
婿養子が法定相続人としてカウントされる場合
妻の両親と普通養子縁組を結んでいれば、婿養子は実子同様に扱われるため、相続税の2割加算は適用されません。ただし、養子縁組を結んでいない場合や、法定相続人として認められない場合には加算対象となることがあります。
婿養子の相続に関するアドバイス
婿養子としての相続においては、法的な手続きや条件が複雑な場合もあります。不明点がある場合には専門家(弁護士や税理士)に相談し、適切な対応をすることが大切です。また、義両親や家族と事前に話し合いを行い、遺言書の作成や養子縁組の確認を行うと安心です。
次章では、婿養子として相続をスムーズに進めるための具体的な手続きや注意点についてまとめていきます。
4-1 婿養子は妻と離婚したら義両親の相続人から外れる?
婿養子は、妻と離婚しても義両親の相続人から外れることはありません。
これは、妻との離婚によって婚姻関係は解消されても、妻の両親と婿養子の間に存在する養子縁組の親子関係が解消されないためです。そのため、妻の両親の遺産相続権を引き続き持つことになります。
婿養子を相続人から外したい場合の手続き
義両親が「離婚した婿養子に財産を相続させたくない」「相続人から外したい」と考える場合には、離縁届を提出し、養子縁組を解消する必要があります 。離縁によって親子関係が法的に消滅するため、婿養子は義両親の相続人から外れます。
離縁届の提出方法と必要書類
以下は、離縁届の手続きについての詳細です。
項目
詳細
提出できる人
養親(妻の両親)、養子(婿養子)
提出先
養子または養親の本籍地、または養子または養親の住所地の市区町村役場
必要書類
– 離縁届
– 養親・養子の戸籍謄本(本籍地に提出する場合は不要)
– 養親・養子の印鑑
– 本人確認書類
離縁届提出時の注意点
離縁は、養親と養子の双方の合意 が必要です。一方的に手続きを進めることはできません。
離縁届を提出した場合、戸籍上の記載も変更 されます。
4-2 婿養子は相続放棄できる?
婿養子も他の相続人と同様に相続放棄をすることが可能です。
たとえ妻の両親から婿養子として事業の継承を期待されていた場合でも、法的には相続放棄を選択する権利があります。
ただし、相続放棄を行うためには、法定の手続きと期限を守る必要があります。
相続放棄の条件と期限
期限 :相続放棄は相続開始(被相続人が死亡した日)を知った日から3か月以内 に行う必要があります。
手続き先 :故人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。
相続放棄の申立手続きの概要
項目
詳細
提出先
被相続人(故人)の住所地を管轄する家庭裁判所
手続きする人
相続放棄を希望する相続人(婿養子自身)またはその法定代理人
手数料の目安
– 収入印紙:800円
– 郵便費用:1,000円程度
必要書類
– 相続放棄申述書 (家庭裁判所の公式様式を使用)
– 故人の死亡と相続人であることがわかる戸籍謄本
– 故人の住民票除票または戸籍附票
– その他、家庭裁判所が指定する書類
相続放棄を選択する際の注意点
相続放棄の効果
相続放棄を行うと、妻の両親の財産(遺産)だけでなく、負債や債務 も相続しないことになります。そのため、遺産よりも負債が多い場合には有効な選択肢となります。
他の相続人への影響
相続放棄をした場合、自分の相続権が消滅するため、他の相続人(妻や義兄弟など)が相続分を分け合うことになります。この影響を理解した上で選択することが重要です。
期限の厳守
相続放棄の期限である「3か月以内」を過ぎると、相続放棄が認められなくなるため、早めの対応が求められます。
専門家への相談を検討する
相続放棄は後戻りができないため、慎重に判断する必要があります。疑問点がある場合は弁護士や司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
次のセクションでは、婿養子が相続税の「2割加算」の対象になるかについて解説します。
4-3 婿養子は相続税の2割加算の対象に含まれる?
婿養子は相続税の計算時に2割加算の対象にはなりません。
これは、婿養子が妻の両親と養子縁組を結んでいるため、法律上の**直系卑属(子供)**として扱われるからです。このため、相続税の計算においても、妻やその兄弟姉妹と同等の扱いを受けます。
2割加算とは?
相続税法では、故人の配偶者や直系卑属(子供や孫)以外の相続人が遺産を受け取る場合、その相続税額に20%の加算が適用される仕組みです。たとえば、以下の場合に2割加算が適用されます:
故人の兄弟姉妹が相続人となった場合
故人の子供の配偶者(婿や嫁)が、故人の直系卑属として認められない場合
婿養子の場合
妻の両親と養子縁組 を行った婿養子は、法律上は故人の子供と同等の立場となるため、相続税の2割加算の対象外 です。これは、実子であっても養子であっても法的な相続の取り扱いが同一であることに基づいています。
「婿」の場合
一方で、妻の両親と養子縁組をせずに「婿」として遺産を受け取った場合には、相続税の計算で2割加算が適用されます。このケースでは、婿は故人の「直系卑属」ではなく、法律上は配偶者の親族(他人)として扱われるためです。
注意点
相続税の加算対象になるかどうかは、養子縁組の有無で決まります。妻の両親からの財産相続を想定する場合、養子縁組を結ぶことで2割加算を回避できます。
遺言書を通じて遺産を受け取る場合でも、養子縁組を結んでいないと2割加算が適用されるため、事前の確認が重要です。
まとめ
婿養子は妻の両親と養子縁組を結んでいるため、妻の両親 と実両親 の両方の相続人となる権利を持ちます。養子であっても法定相続分は実子と変わらず、妻の両親の相続においても妻や妻の兄弟姉妹と同じ法定相続分が認められます。
婿養子の相続における注意点
相続権を失うケース
婿養子が義両親の財産を受け取れない場合として以下が挙げられます:
養子縁組の解消 :養親と養子の親子関係が解消されると、婿養子は義両親の相続人から外れます。
遺言書の内容 :義両親が遺言書で「婿養子には財産を遺さない」と明記していた場合、遺産を受け取ることができません。ただし、この場合でも遺留分を請求する権利があります。
遺留分の請求
婿養子には実子同様に遺留分が認められています。遺言書の内容が遺留分を侵害していた場合には、遺留分相当額の金銭を他の相続人に請求することが可能です。
相続トラブルのリスク
婿養子は法律上では実子と同じ扱いを受けますが、妻の兄弟姉妹などの他の相続人が「納得できない」と感じる場合もあります。このような感情的な不満が相続トラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。
トラブル回避のための対策
遺言書の作成
義両親が遺言書を作成し、財産の分配について具体的に指示しておくことで、相続人間の争いを防ぐことができます。
生前贈与
生前に贈与を行い、財産の分配を計画的に進めることで、相続時のトラブルを軽減することが可能です。
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