親が認知症になった場合の相続トラブルと対策について
親が認知症と診断されたり、進行が見られる中で相続対策を講じない場合、以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
親が認知症と判断された結果起こる相続トラブル例と対策
相続対策の効力を巡って相続人同士でもめる
トラブル例
- 遺言書の有効性が争われる(判断能力の有無を巡る訴訟)。
- 生前贈与や家族信託を「親の意思ではない」と主張する相続人が現れる。
対策:
- 公正証書遺言の作成
公証人が確認しながら作成するため、有効性が担保されやすい。 - 信託専門家の関与
家族信託の契約は専門家の助言を受けて法的に整える。 - 早期対策の実施
親の判断能力が十分なうちに準備を進める。
親が望む財産承継ができない
トラブル例
- 遺言がないため、法定相続分に基づく分割が行われる。
- 生前の意向が明確に残されておらず、家族間で意見が対立。
対策
- 遺言書で意思を明確化
特に「誰に何を渡すか」を具体的に記載し、意向を明確化する。 - 遺留分の考慮
特定の相続人への配慮が必要な場合は、遺留分に配慮して遺言内容を調整。 - 家族会議の開催
家族全員で話し合いを行い、事前に理解と合意を形成。
相続税の節税対策ができない
トラブル例
- 財産の移転が遅れ、贈与税控除を活用できない。
- 適切な資産の運用や分散が行われないため、相続税負担が増加。
対策
- 早期の生前贈与
年110万円の贈与税の非課税枠を活用。 - 生命保険の活用
非課税限度額を最大限に活用して相続税の負担を軽減。 - 不動産の活用
小規模宅地等の特例を活用して評価額を抑制する。 - 専門家相談
税理士や不動産の専門家にアドバイスを求める。
介護費用や生活費、葬儀代を引き出せない
トラブル例
- 親名義の口座が凍結され、必要な資金が使えない。
- 財産管理が適切に行われず、親の介護費用や生活費が不足。
対策
- 家族信託の活用
信託契約により、財産管理や親の生活費捻出をスムーズに行える。 - 成年後見制度の申立て
判断能力が低下してからでも後見人を立てて資産を管理。 - 共有名義口座の利用
事前に信頼できる家族と共有名義口座を作成。 - エンディングノート作成
親の意向を明確にして、生活費や葬儀代の準備を可視化。
口座凍結対策には成年後見制度が有効
成年後見制度は、判断能力が不十分になった人(被後見人)を法的・生活的に支えるための制度です。この制度を利用することで、凍結された口座から預貯金を引き出すことや、不動産の売却などが可能となり、被後見人の生活を支える役割を果たします。
成年後見制度の2つのタイプ
- 任意後見制度
- 開始時期: 判断能力が低下する前に利用契約を締結。
- 特徴: 被後見人が自ら信頼できる人を後見人として事前に指定する。
- メリット: 柔軟な対応が可能で、意思能力低下後にスムーズに開始。
- デメリット: 制度を発動するための申立てが必要。
- 法定後見制度
- 開始時期: 判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申立てを行う。
- 特徴: 家庭裁判所が適切な後見人を選任(必ずしも家族とは限らない)。
- メリット: 既に凍結された口座から預貯金を引き出せる。
- デメリット: 手続きが煩雑で、利用開始まで数ヶ月~半年かかることがある。
成年後見制度の留意点
- 後見人の報酬
- 家族以外が選ばれる場合、報酬が発生(目安: 月2万~6万円)。
- 報酬は家庭裁判所が決定し、被後見人の財産から支払う。
- 口座の利用目的
- 後見人は被後見人の生活維持や医療費、介護費用の捻出が主な目的。
- 相続税対策や財産の積極的な運用は許可されない。
(例:相続税を抑えるための不動産売却や贈与は不可)
- 後見人選任の透明性
- 家庭裁判所の判断により、弁護士や司法書士が後見人に選任される場合がある。
- 家族信託や任意後見契約を利用しない場合、意向に反した人が選ばれるリスクも。
成年後見制度の活用方法と相続対策の補完
成年後見制度単体では、以下の点において不十分な場合があります
- 相続対策に活用できない
後見人は被後見人の財産管理を担いますが、相続税対策のための積極的な財産処分や贈与は制度の趣旨に反するため認められません。 - 手続きの時間と柔軟性の欠如
特に法定後見制度では、裁判所を通じた手続きが必要で時間がかかる。
そのため、成年後見制度を補完する形で 家族信託や遺言、生前贈与 を組み合わせることが重要です。これにより、被後見人の生活を守りながら、相続トラブルの予防や節税効果を実現できます。
まとめ
親が認知症を発症すると、相続に関する意思決定が難しくなり、トラブルが発生しやすくなります。認知症になる前の早い段階から対策を講じることで、家族の負担を軽減し、スムーズな相続を実現することが可能です。
専門家への相談を積極的に行い、状況に応じた最適な方法を選びましょう。
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