家族信託の1から10まで
家族信託は、
ご家族の未来を守る契約です。
生前対策をしなかったせいで揉めてしまう。その引き金になるのが、「認知症」です。
例えば「認知症の両親に遺言を書かせた。」
例えば「生活費などの肩代わりをしたのに、遺産の配分が同じなのはおかしい。」など。
生前対策にご興味のある方。ぜひ家族信託の利用は前向きに進めていってください。未来の家族を守ることができます。また、困ったら、いつでも私たちを頼ってください。
はじめに
沖縄の皆様へ。
認知症対策をしたいけど、よくわからないという声をよくいただきます。
そこで、相続だけで年間600件ほどのご相談を受けている私たちが、家族信託について完全に理解できるようなものを作ります。
ここに書いてあることを読むだけで、
・認知症によるリスク
・他の生前対策との違い
・銀行に頼むことの落とし穴
など、知っておくことで防げる不利益について、学ぶことができます。
認知症と診断されると、相続対策はできなくなる
家族信託をひとことで言うと、「ご両親の認知症対策」です。
認知症になった親の財産をそのまま放置すると、親の口座が凍結されたり、支払い手続きができなくなるため、次のような問題が起こります。
❌ 病院代、介護費、生活費が払えなくなる。
❌ 親の年金や預貯金があっても、家族が勝手に引き出すことはできないため、家族や親族の誰かが支払わなくてはいけなくなってしまう。
こうした問題を解決する手段は、これまで広く知られていませんでした。なぜなら…
- 認知症や相続の問題は、一生に何度も経験するものではない
- 人と相談しにくい話題であり、情報を得る機会が少ない
- 家族信託は比較的新しい制度であり、専門家でも詳しくない人がいる
このような問題を解決するのが 「家族信託(民事信託)」 です。
認知症になると…
認知症を発症すると、相続対策はほぼ不可能になると考えてください。認知症になった方は「意思能力がない」と判断される可能性があり、その状態で作成した遺言書や生前贈与の契約などは無効となります。
ただし、認知症には症状の波があり、調子が良いときには遺言書を作成したり、契約書にサインしたりすることも可能です。しかし、これが後のトラブルにつながるケースが少なくありません。
例えば、不利な内容の遺言書が見つかった場合、相続人が「この遺言書を書いたとき、母はすでに認知症と診断されていた。これは母の本当の意思ではなく、誰かに無理やり書かされたものだ!」と裁判に発展することがあります。
遺言の有効性は、医師の診断書、介護施設の記録、家族の証言などをもとに総合的に判断されます。結果として遺言が無効とされたケースも多くありますが、実際には医師の診断書などの明確な証拠がないと認められないことがほとんどです。「母は認知症だったに違いない」と主張するだけでは、裁判で認められる可能性は低いのです。
早めの相続対策が重要
厚生労働省のデータによると、65歳以上の約28%が認知症または予備軍と言われています。多くの方が「自分は元気なまま人生を終えられる」と考えがちですが、現実には認知症を発症する可能性は決して低くありません。
認知症になってからでは相続対策はほぼ不可能です。できる限り早めに対策を進めておきましょう!
疑問1:親が認知症になって何もしない場合、親の生活費は家族が肩代わりしなければならないのか?
▷義務はありませんが、基本的には親族の誰かが負担するという形になります。
1-1. 何もしないと、親の生活費はどうなる?
認知症になった親の財産をそのまま放置すると、親の口座が凍結されたり、支払い手続きができなくなるため、次のような問題が起こります。
① 親の財産を自由に使えなくなる
- 親の年金や預貯金があっても、家族が勝手に引き出すことはできない(銀行は認知症を知ると口座を凍結する可能性あり)。
- 病院代、介護費、生活費が払えなくなる。
② 病院や施設から「家族が払ってください」と言われる
- 病院や介護施設は、親本人が支払えない場合、家族に「立て替えてください」と言うことがある。
- ただし、法的には家族に支払い義務はない。
③ 家族がやむを得ず立て替えることになるケースも
- 親の医療費や介護費を滞納すると、治療や介護サービスを受けられなくなる可能性がある。
- やむを得ず家族が立て替えることになるが、その後、親の財産から回収できる仕組みがないと、家族の負担が増える。
疑問2:認知症による親の財産管理や生活費の支払いについて、いつ・誰が・どこに相談すべきか?
結論としては、認知症を発症する前にできるのが「家族信託」「遺言」、認知症発症後にできるのが「成年後見」になります。
項目 | 家族信託 | 遺言 | 成年後見 |
---|---|---|---|
目的 | 財産管理・承継を柔軟に行う | 死後の財産の分配を決める | 判断能力が低下した人の財産管理・契約代行 |
開始時期 | 設定後すぐに効力発生 | 死亡後に効力発生 | 判断能力が低下してから |
対象者 | 元気なうちに設定し、認知症などの備えに活用 | 自身の死後に財産を相続人に渡すための準備 | 判断能力が低下した人 |
財産管理の範囲 | 生前・死後の財産管理が可能 | 遺産(死亡時点の財産)に関する指定のみ | 本人が生きている間の財産管理 |
管理者 | 受託者(家族など) | 遺言執行者(相続人や専門家) | 成年後見人(家庭裁判所が選任) |
本人の判断能力 | あるうちに契約する必要がある | あるうちに作成する必要がある | 判断能力が低下してからでも利用可能 |
裁判所の関与 | なし | なし | あり(成年後見制度の申し立てが必要) |
費用 | 信託契約書の作成費用・登録費用など | 公正証書遺言の場合、公証人手数料が必要 | 申し立て費用+後見人の報酬(継続的) |
活用場面 | 認知症対策・事業承継・財産管理の継続 | 遺産分割トラブル防止・特定の相続人への配分指定 | 認知症や障害で自分で契約や管理ができなくなったとき |
デメリット | 手続きが複雑・専門家のサポートが必要 | 遺言執行までの間に財産管理ができない | 裁判所の関与が必要で手続きが面倒 |
2-1. 親がまだ元気なうち(認知症発症前)
誰が相談する? → 子供や親族(親が判断能力のあるうちに一緒に相談)
相談先: ✅ 弁護士・司法書士(家族信託や任意後見契約)
💡 この段階でやるべきこと:
- 家族信託を検討する(親が判断能力のあるうちに契約)
- 任意後見契約を結ぶ(認知症発症後の財産管理をスムーズにするため)
- 親の財産(預貯金・不動産・年金)を把握する
弁護士と司法書士の違いは?
項目 | 弁護士 | 司法書士 |
---|---|---|
業務範囲 | 幅広く法律問題全般を扱う | 不動産・商業登記、裁判所提出書類の作成 |
裁判対応 | すべての裁判に対応可能 | 簡易裁判所(140万円以下の訴訟)のみ代理可 |
交渉・和解 | 代理人として交渉・和解交渉が可能 | 基本的に代理交渉は不可 |
成年後見制度 | 成年後見人の選任や裁判所での対応が可能 | 成年後見の書類作成がメイン |
家族信託 | 信託契約の設計・トラブル対応に強い | 信託契約の登記手続きを担当 |
基本的には、弁護士がおすすめです。なぜなら、内容を決める設計の部分が一番難しく、ここをしくじるとせっかく対策した内容で揉めてしまうことがあるためです。
ご存知のとおり、相続トラブルは士業のなかでも弁護士しか扱えないことに法律でなっています。
したがって、トラブル対策設計なども含めて提案できる弁護士がおすすめです。
2-2. 親の認知症が進行し始めた(判断能力が低下)
相談先:✅ 弁護士・司法書士(成年後見制度の準備)
誰が相談する? → 子供や親族(親の判断能力が低下しつつある場合)
💡 この段階でやるべきこと:
- 成年後見制度を検討する(すぐに申し立てる準備)
- 施設入所や介護サービスの手配(支払い方法を考える)
- 親の口座が凍結される前に、家族信託や任意後見契約がないか確認
2-3. 親が認知症を発症し、口座が凍結されるなど、支払いが困難になった
相談先:✅ 弁護士・司法書士(成年後見の手続き代行)
誰が相談する? → 子供や親族(財産管理ができなくなった場合)
💡 この段階でやるべきこと:
- 成年後見人の申し立て(家庭裁判所に申請、時間がかかるので早めに)
- 介護費や医療費の公的支援を申請(生活保護・高額介護サービス費制度など)
- 介護施設と相談し、支払い方法を確保する
疑問3:なぜ早めに準備するほど、費用が安く済むのか?
- 認知症発症後ではできる手続きが限られるから
- 早めに対策をすれば、不要な手続きを避けられるから
- 成年後見制度より家族信託のほうが費用負担が少ないから
📌 早めに準備することで費用を抑えられる理由
3-1. 認知症発症後の「成年後見制度」は継続的な費用がかかる
認知症が進行してから財産管理をする場合、成年後見制度の利用が必要になる。
しかし、成年後見制度には長期的に費用がかかります。
3-2. 早めに家族信託を設定すれば、長期的な費用がかからない
家族信託は、一度契約すれば継続的な費用はほぼ不要。
また、信託契約を結べば成年後見制度を使わなくて済むため、結果的に費用を大幅に削減できる。
3-3. 口座凍結や相続対策を事前にすれば、余計な手続きを避けられる
例えば、認知症発症後に口座が凍結されると、家族が生活費や医療費を立て替えざるを得なくなり、その後、成年後見制度の利用や家庭裁判所の手続きが必要になってくる。
まとめると…
- 口座凍結されたがお金が必要 → 成年後見制度を申し立てる → 継続的な費用がかかる
- 相続トラブルが発生した場合、調停・裁判になると数十万~数百万円の費用がかかる
▷事前に家族信託や遺言書を作成しておけば、これらの手続きを回避できるため、費用を大幅に節約できる。
疑問4:成年後見制度の費用と、家族信託の費用はどのくらい違うの?
まず、費用形態が全く異なります。
家族信託は、1度費用を支払えば対策完了です。
一方で、成年後見制度は年間〇円というように、継続的に費用を支払っていくというものです。
つまり、成年後見制度を利用すると、亡くなるまで毎年費用がかかるため、長期的に見ると数百万円のコストになることもあります。
対策のタイミング | 必要な手続き・費用 | メリット |
---|---|---|
親が元気なうちに家族信託を設定 | 30万~80万円(1回) | 成年後見不要、口座凍結回避、スムーズな財産管理 |
認知症発症後に成年後見を申し立てる | 毎年24万~60万円 | 継続的な費用負担、裁判所の監督下で自由度が低い |
認知症発症後に口座凍結後の対応 | 成年後見申し立て+生活費立て替え | 余計な費用が増える、資産が動かせないリスク |
疑問5:なるほど。わかったけど、じゃあどこに相談したらいいの?
専門家との付き合い方を考える
まず、お伝えしておきたいのですが、私たちも家族信託を取り扱っている沖縄の弁護士事務所です。
本当は、私たちのような実績のある事務所が他にあればよいのですが、なかなかないというのが、現状だと感じています。相続専門のホームページを持ち、法律にまつわる記事を書いているところは、ほぼないことがその理由です。
相続紛争に疎い専門家
弁護士には、司法書士や行政書士にはできない専門分野があります。この分野を弁護士以外の者が扱うことを「非弁行為」といい、これに該当すると2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
相続に関する弁護士の専門領域には、遺産分割をめぐる法的相談、遺産分割協議の代理、家庭裁判所での代理人業務などが含まれます。簡単に言えば、「相続で揉めている場合に対応できるのは弁護士だけ」ということです。
ということは、つまり、相続の揉め事の経験があるのが、弁護士ということになります。
銀行は家族信託の本当の専門家ではない
最近、「家族信託」の普及に伴い、銀行でも無料相談を実施するところが増えています。しかし、この無料相談には注意すべき点が多く、安易に飛びつくと後々後悔する可能性があります。
銀行の担当者は、知識や経験において、本当に相談者に最適な家族信託の仕組みを提案しているとは限りません。
なぜなら、銀行の担当者は、法律の専門家、しいては相続の内情を知っている訳ではないからです。
相続の熾烈なトラブルを目の当たりにし、相談者と一緒に解決していく。現場で、生々しい相続を見ている私たち弁護士よりも、現場を知っている方がいらっしゃったらぜひスカウトしたいくらいです。笑
中には、相続の知識もある方もいらっしゃることもあるかもしれませんが、やはり後々のトラブルの確率を考えると、法律家に任せた方が安心だと思います。
家族信託で、もしお困りのことがあれば、
ご相談に乗りますので、お気軽にご連絡ください。