沖縄の相続「トートーメー」のルールと注意点を弁護士が解説!
沖縄の古くからの伝統としてあるトートーメーは、相続の枠組みのかでは争いの種になってしまうこととして、弊所への相談も多い内容です。
沖縄特有の相続「トートーメー」とは?
トートーメーとは、諸説ありますが、もともとは「尊いお方の御前」の意味で、漢字では「尊御前」とも書き、亡くなった方の名前や死亡年月日などが記入された「位牌」のことを指しています。
その他にも「イ―フェー」、「グヮンス」、「リージン」といった呼び方をされることもあるようです。
トートーメー(位牌)を通して祖先を供養する習俗が生まれたとされるのは中国であり、トートーメーを通じて祖先や故人をしのび供養する習俗は、沖縄では西暦1600年代からの習俗とされています。
この習俗が沖縄に伝わったルートに関しては、中国福建省の人たちが沖縄に移住して作ったクニンダ(久米村)を通して伝わったとする説、あるいは、中国から本土に伝わり、臨済宗を通して沖縄に伝わったとする説などがあります。
また、沖縄のお墓は、大きく立派な破風墓や亀甲墓が建立されていますが、これらも台湾や中国の福建省でよくみられる墓となっています。
位牌は、仏壇の中央に安置するのが古くからの習わしとされ、その下の方にウコール(香炉)が置かれます。このような位牌が安置されウコールが置かれた仏壇そのものをトートーメーと呼ぶこともあります。
トートーメーの承継ルール
①トートーメーの承継者は長男とし、長男以外の次男、三男以下に継がせてはいけない
②娘に継がせてはいけない
③継承者がいない場合は、男の兄弟の子供かいとこの子供(いずれも男性)に継がる必要があり、父方の血筋をひかない者に継がせてはならない
④次男・三男以下の者は分家して、亡くなった時にそれぞれの長男が改めてトートーメーを仕立ててまつらなければならない
このようなルールがあるため、ルールに違反して承継されたトートーメーについては「シジタダシ」といって、祖先の系譜をたどりトートーメーの承継をただすということも行われていました。そのため家系図や家譜がしっかり作られている家や門中もあります。
民法上のトートーメーの承継ルールとは?
さて、このような位牌や仏壇、家系図やお墓(墓地)は、法律上は「祭祀財産」と呼ばれ、「遺産」とは異なる財産と理解されています。民法上のトートーメー等の承継のルールは、主に次の3点です。
①被相続人の指定
②慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
③被相続人の指定もなく慣習も不明の場合は家庭裁判所が定める。
沖縄の祭祀承継に関する慣習と慣習だけで決められないこと
沖縄の場合、他の地域に比べて祭祀承継に関する慣習は強固であるように思われます。
今でも古くからの慣習に従って祭祀財産を承継している家庭については、この慣習によってトートーメーの承継者を決定できる可能性があります。
しかし、時を経るに連れ、また個々の家庭の状況により、徐々に古くからの承継のルールと異なる方法で、トートーメーが継承されているご家庭も多くなってきています。また、憲法では男女平等が定められています。
そのため今後トートーメーを誰が承継するかについて争いが生じた場合には、慣習だけで決定することができず、最終的には家庭裁判所に決めてもらわなければならない事態が予測されます。
家庭裁判所において、誰がトートーメーを承継すべきかを決定する際には、裁判例では、「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、承継候補者と祭具等との間の場所的関係、承継候補者の祭祀主宰の意思や能力、その他一切の事情(例えば利害関係人全員の生活状況及び意見等)を総合して判断すべき」ものとされています(東京高裁決定平成18.4.19)。
民法上のルールでは、必ずしも沖縄におけるトートーメー等の承継に関するルールに従って祭祀承継者が指定されるわけではないのです。
祭祀財産の承継者を決めておくべき理由
そこでトートーメーに関するトラブル回避のためには、被相続人による指定によって予め祭祀財産の承継者を決めておくことが非常に重要なのです。
祭祀承継者の指定に関して、民法には特定の指定方法が定められているわけではありません。
しかし、遺言書によって祭祀承継者を指定しておくことが、祭祀承継者の指定を確実に、そして第三者にも明らかにする方法として有力な選択肢となります。
一般には遺言書には遺産の分配方法についてのみ記載をすることも多いのですが、祭祀財産についても記載することが、後々の家族のトラブルを回避する方法としてとても大切です。
トートーメーを承継する長男が遺産をすべて相続できるわけではない
沖縄では、このトートーメーを承継する長男が、遺産もまたすべて相続するものと理解されていることで、遺産相続における深刻な問題となっています。
旧民法では、家督相続制度が定められていて、遺産は基本的に長男が単独で相続することとされていました。
しかし、この旧民法はすでに昭和22年に改正され家督相続制度は廃止されています。ただ、沖縄は当時アメリカの統治下にあったこともあり、旧民法が昭和31年まで適用されており、その間家督相続の制度が残されていました。
また、沖縄では門中の仕組みも存在しており、この門中においても、門中の「財産」や「祭祀財産」については、門中の主催者に帰属するものと考えられていますが、この門中の主宰者もやはり基本的に長男が承継することとされていました。
このような様々な社会的背景のため、沖縄では、今でも長男が「トートーメー」と「遺産」をどちらも単独で承継するものと考えている高齢者の方も少なくありません。
遺留分という遺産の最低保証
トートーメーのような「祭祀財産」については、先ほどの説明のとおり、被相続人の指定により長男に単独で定めることが可能です。
しかし、「遺産の相続」については、被相続人が生前そのように指定していたとしても、長男に単独で遺産の全てを相続させることは原則として出来ません。
なぜなら、配偶者や男女を問わず被相続人の子がそれぞれ相続するものとされており、「家督相続制度」は残されていないかです。
また、民法では「遺留分」といって、例え被相続人が全ての遺産を長男に相続させると遺言を残していても、他の相続人にも最低限遺産を受け取る権利が保証されています。
トートーメーを弁護士に依頼するメリット
親からは自分がトートーメーも含めすべての遺産を相続すると聞かされていた長男と、自分たちにも法定相続分があり当然遺産を相続する権利があると考えている他の兄弟姉妹とで、遺産分割について深刻な争いが生じてしまうのです。
また、トートーメーを承継する場合には、トートーメーの承継者として年忌法要等の祭祀の主宰のため経済的負担を伴うことも少なくありません。このような負担があるにも関わらず、遺産については他の相続人と平等に取り扱われるということに不満が残るという場合もあります。
このような争いごとを避けるためには、しっかりトートーメーの承継、そして遺産分割の方針について生前に準備をしておくことが非常に大切です。
この生前対策の一つとして、遺言書を作成し、被相続人が自分の意思をしっかり家族に示すことで、大半の遺産トラブルは解決されます。
当事務所では、遺産の調査、遺産分割のプランニング、遺言書作成等の生前対策支援に注力しておりますので、まずはお気軽にご相談下さい。
弁護士法人琉球法律事務所が選ばれる5つの理由
-
- 1
- 累積相続相談実績
1,800件以上
(2016~2024年)
-
- 2
- 初回相談0円
完全個室の相談室
-
- 3
- 軍用地の相続に強い
沖縄の実績多数
-
- 4
- アクセス良好
牧志・美栄橋駅
徒歩10分
-
- 5
- 100件を超える顧問先
から選ばれている
信頼感