| この記事の要点 ・両親が相次いで亡くなった場合、2つの相続の遺産分割を、家庭裁判所でまとめて進めることができます。 ・介護を理由とする「寄与分」は、相続人が介護の見返りとして生前に財産を受け取っていると、認められないことがあります。 ・本事例(沖縄本島の土地が中心)では、調停が不成立となった後、那覇家庭裁判所の審判で、ご依頼者が希望した土地を取得し、代償金を支払う形で解決しました。 |
はじめに
沖縄では、実家や先祖代々の土地が遺産の中心になり、きょうだいの間で「誰が土地を継ぐか」「親の面倒を見た人をどう評価するか」で意見が分かれることが少なくありません。今回は、ご依頼者が、沖縄にある両親の遺産について、家庭裁判所の調停と審判を通じて解決に至った事例をご紹介します。ご本人が特定されないよう、内容の一部を抽象化しています。
1. 事案の概要
1-1. 相続の状況
母が亡くなった数年後に父も亡くなり、2つの相続が続けて発生しました。相続人は子どもたちとその家族です。手続の途中で相続人の一人が亡くなるなど、当事者の状況も変わっていきました。
1-2. 主な遺産
| 遺産の種類 | 内容 |
| 土地・建物 | 沖縄本島の実家と、その周辺の宅地 |
| 現金 | 相続人の一人が保管していた両親の預金の払戻金 |
| 預貯金 | 金融機関の口座 |
2. 何が争いになったのか
2-1. 生前に土地をもらった相続人がいた(特別受益)
相続人の一人が、数十年前に父から複数の土地の贈与を受けていました。ご依頼者は、これを遺産の前渡し(特別受益、民法903条)として計算に入れるべきだと主張しました。
2-2. 介護や仕送りを評価してほしいという主張(寄与分)
両親の近くで入通院に付き添っていた相続人や、長年仕送りをしていた相続人が、その貢献を「寄与分」(民法904条の2)として上乗せするよう求めました。
2-3. 親が亡くなる前後のお金の動き
親が亡くなる前後に預金から引き出されたお金があり、その使いみちが問題になりました。
3. 解決までの流れ
ステップ1:資料を集めて事実を確認
戸籍の収集、金融機関への取引履歴の開示請求、弁護士会照会(弁護士法23条の2)などで、遺産の範囲とお金の動きを一つずつ確認しました。
ステップ2:那覇家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て
両親それぞれの遺産分割調停を申し立て、まとめて審理してもらいました。土地の評価は、当事者の合意と不動産鑑定で決めました。
ステップ3:相続分の譲渡で当事者を整理
一部の相続人から相続分の譲渡を受け、手続から抜けてもらうことで、当事者の数を減らしました。
ステップ4:調停不成立から審判へ
4年以上話し合いを重ねても合意に至らなかったため、審判に移行しました(家事事件手続法272条4項)。
4. 審判の結果
| 項目 | 結果 |
| 特別受益 | 贈与は認定。ただし介護等の事情から、親が持戻しを免除する意思を黙示的に示していたと判断 |
| 寄与分 | 介護・仕送りのいずれの主張も認められず |
| 土地 | ご依頼者が希望した土地を取得し、他の相続人に代償金を支払う |
| 現金 | 保管していた相続人が取得し、他の相続人に代償金を支払う |
審判の確定後、当事務所で代償金の支払と相続登記まで行いました。
5. よくある質問(Q&A)
Q1. 親の介護をしていれば、必ず寄与分が認められますか?
必ずではありません。寄与分には、親族として通常期待される程度を超えた「特別の寄与」が必要です。本事例では、介護の見返りとして生前に土地を受け取っていたことから、無償の貢献とはいえないと判断されました。
Q2. 生前に財産をもらった相続人がいる場合、必ず遺産に持ち戻されますか?
持ち戻されない場合もあります。親が「持戻しは不要」という意思を示していたと認められると、計算に入れません(民法903条3項)。本事例では、贈与を受けた相続人が親の生活を最も支えていた事情から、その意思が黙示的にあったと判断されました。
Q3. 特別受益や寄与分は、いつまでも主張できますか?
相続開始から10年を過ぎると、原則として主張できなくなりました(民法904条の3)。2023年4月より前に開始した相続には経過措置があります。早めのご相談をおすすめします。
6. 担当弁護士からのメッセージ
親の介護をしてきた方、長年仕送りを続けてきた方、実家の土地を守りたい方。遺産分割では、それぞれの相続人に、それぞれの思いがあります。本事例でも、どの方の主張にもご家族への思いがあり、話し合いだけで折り合いをつけるのは簡単ではありませんでした。
こうした場面では、気持ちのぶつかり合いから一歩離れ、通帳の履歴や登記などの客観的な資料をもとに、法律の枠組みで一つずつ整理していくことが、結果として解決への近道になると考えています。本事例も時間はかかりましたが、ご依頼者が希望された土地を取得し、登記まで終えることができました。
沖縄の相続は、土地の扱いや家族の事情が複雑になりやすい分野です。「何から手をつければよいか分からない」という段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
7. 弁護士に相談するメリット
- 金融機関への開示請求や弁護士会照会で、遺産やお金の動きを客観的な資料で確認できます。
- 特別受益や寄与分について、法律と裁判例に沿った主張を組み立てられます。
- 相手方と直接やり取りせずに済み、精神的な負担を減らせます。
- 審判後の代償金の支払や相続登記まで、まとめて任せられます。
8. 無料相談のご案内
「きょうだいと話し合いがまとまらない」「介護や生前贈与をどう扱えばよいか分からない」「県外に住んでいて沖縄の手続が進められない」とお悩みの方は、琉球スフィアへご相談ください。那覇・ライカム・読谷の各オフィスで、初回30分の無料相談を行っています。
- フリーダイヤル:0120-927-122(平日9:00〜17:30)
- WEB予約:お問い合わせフォーム
ご注意
- 解決までの期間や結果は、事案ごとの事情によって異なります。同様の結果をお約束するものではありません。
- 本事例は、ご本人が特定されないよう内容の一部を変更・抽象化しています。
- 法令の内容は2026年10月時点のものです。
執筆者
弁護士 山下 剛【やましたごう】
弁護士法人琉球スフィア
主な取扱分野:相続・遺産分割
参考資料(出典)
- 民法(第903条・第904条の2・第904条の3・第907条)e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - 家事事件手続法(第272条)e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052 - 弁護士法(第23条の2)e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205